当社は2026年3月31日をもって会社設立から30年を終え、4月1日に30周年を迎えました。これもひとえに、これまで当社を支えてくださった社内外の皆様のお力添えによるものと、改めて深く感謝申し上げます。

振り返れば、この30年には実にさまざまな出来事がありました。資金難に陥ったこともありましたが、多くの方々に支えられて上場を果たすこともできました。総じて、この30年は幸せな時間であったと感じています。

1996年4月1日に会社を設立し、半年も経たないうちに父が急逝しました。私はその年の11月から、父が大切に育ててきた故郷を代表する「木頭柚子(きとうゆず)」をお取引先の皆様にお送りし始め、昨年で一度も欠かすことなく30回目を迎えました。

当社の歩みを振り返ると、この木頭柚子や木頭という私の故郷、徳島県、そして家族の存在なくして、現在のメディアドゥを語ることはできません。

本社を構える、私が愛してやまないパレスサイドビルに入居できたことも、2017年に業界No.1企業を買収できたことも、当時の、そして現在の社員の努力があって成し遂げられたものです。しかしそれだけでなく、私たちは常に私の故郷に守られ、そのバックグラウンドを理解されてきたからこそ、多くの挑戦を実現できたのだと感じています。

テクノロジーが発展した現在においても、世の中の物事は人と人が出会い、理解し合うことで進んでいくものです。過去があるからこそ現在の人が存在し、未来のために現在の私たちがいます。つまり、人と人との関係は今この瞬間だけのものではなく、過去によって形成され、未来への思いによって築かれていくものだと私は考えています。

私は常に、現在や未来を語る際、過去についても意識的に語ってきました。

日本に限らず、世界中の文明は絵や文字によって、過去から未来へと継承されてきました。その最たるものの一つが「本」です。メディアドゥは、多くの出版社様が、多くの作家の先生方とともに、何十年、あるいは百年以上もかけて生み出してきた「本」という作品を大切にお預かりし、デジタルで流通させる事業を担っています。

つまり当社は、テクノロジーを活用することで、過去を未来へと紡ぐ仕事をしています。

私はすべての人が、過去を未来へつなぐための「現在」という架け橋の役割を担っているのだと考えています。

そして昨年から本格的に開始したSC(Sustainability Creation)事業も根底にあるものは同じです。物や情報が不足していた時代から、今はそれらが溢れる時代へと移行しました。価値や資源を生み出す地域を上流、それを享受する場所、人が集まり続ける都会を下流だとすれば、「上流は下流のためにある」という考え方だけではなく、上流は上流として、自らの生き方や地域の守り方を主体的に考え、行動する時代になっていると捉えています。

その思考や行動に必要なのは、単に物や労力を提供することではなく、より俯瞰的に社会構造を学び、理解したうえで挑戦するアントレプレナーシップを身につけ、それを発揮していくことです。

人口減少や地方衰退といった右肩下がりの言葉が並ぶ今だからこそ、それらを身につけて挑戦することで活路が見出され、地域や故郷を守る力が生まれるのだと考えています。

私たちが取り組む、日本国内における電子書籍流通事業、日本の本を電子だけでなく紙としても米国を中心に世界へ届ける事業、そして地域におけるアントレプレナーシップを醸成するSC事業は、いずれも過去を現在の私たちが未来へと紡ぐための取り組みです。

私たちの使命は、過去から連綿と続いてきた日本の文化や文明、そして地域や地方の価値を未来に繋ぎながら、日本国内のみならず世界に知っていただき、理解していただくこと。そのために私たちは、敬意を持って過去を深く理解し、その姿勢を持ち続けながら日々挑戦を重ね、出版業界のみならず日本全体、とりわけ日本の地域、地方に貢献していく決意です。未来のメディアドゥの非連続な成長は、常にそうした挑戦と貢献を積み重ねる中での産物として得られるものと捉えています。

これまでの30年、社内外の皆様とともに築いてきたこのアセットを揺るぎない土台とし、次の世代の可能性を信じ託していくことで、次の30年もメディアドゥの歴史が社会に受け入れられ続けるよう、社員一同、これからも変わらず努力してまいります。

2026年4月
株式会社メディアドゥ
代表取締役社長 CEO

藤田 恭嗣

YASUSHI FUJITA