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メディアドゥが感じているスポーツ事業の魅力 #02 北米スポーツリーグの急拡大に見る方程式

こんにちは!メディカム編集部 経営企画チームです。
メディアドゥは、当社が取り組むプロスポーツ事業「徳島ガンバロウズ」の魅力と企業価値向上の道筋をお伝えするべく、情報媒体『メディアドゥが感じているスポーツ事業の魅力』(全7回・月刊)の発刊を開始いたしました。
これまで、徳島ガンバロウズへの応援の声をいただく一方、社内外の様々なステークホルダーの皆様から多くの疑問の声もいただいています。当社はこの問いに対し、誠実に分かりやすくお伝えする目的で、本媒体の発刊を2024年11月に開始しました。第2回は「北米スポーツリーグの急拡大に見る方程式」がテーマです。

▶PDF版:『メディアドゥが感じているスポーツ事業の魅力 VOL.02』

メディアドゥが感じているスポーツ事業の魅力 バックナンバー

VOL.01 メディアドゥはなぜスポーツ事業に乗り出したのか

https://mediado.jp/medicome/challenge/7696/

VOL.02 北米スポーツリーグの急拡大に見る方程式

はじめに

第1回ではプロスポーツの本質を「体育」ではなく、熱狂的なファンを生む「エンターテイメントビジネス」として捉え、さらなる市場拡大のポテンシャルの大きさを研究した結果として、メディアドゥがどのような覚悟を持ってスポーツ事業に参入したのかを説明しました。

第2回は「北米スポーツリーグの急拡大に見る方程式」をテーマに、北米のスポーツビジネスが驚異的な拡大を遂げている状況に触れ、メディアドゥがそこに見出した方程式と、日本のプロスポーツに感じている大きなビジネスチャンスをさらに詳しく語ります。

発行元:株式会社メディアドゥ 経営企画部(月刊・全7回)

北米スポーツは約30年で急拡大

世界のスポーツ市場規模は第1回で取り上げた通り2023年で4,849億ドル(約74兆円)に達しており、たった10年後の2033年で1.8倍の8,626億ドル(約132兆円)に成長することが見込まれています。日本のスポーツを考える上では、世界のスポーツ市場の35%(約1,695億ドル、約26兆円)を占める北米スポーツビジネスの動向を抜きに語ることができません※1。北米主要スポーツリーグの収益は、世界最大の収益規模を誇るアメリカンフットボール「NFL」(2022年)が約187億ドル(約2.6兆円)、バスケットボール「NBA」(2022-23年)と野球「MLB」(2022年)がそれぞれ約109億ドル(約1.5兆円)※2と続きます。

プロ野球で日米の収益規模を比較すると、1995年時点は日本のプロ野球リーグ「NPB」が900億円、米MLBが1,500億円と日本の約1.7倍の規模でした。しかし現在の収益規模は、NPBが推計2,200億円以上※3なのに対し、米MLBは前述の約1.5兆円で、NPBに約7倍もの差を付けるほどに成長しています。

図1:日米スポーツリーグの収益規模

同水準の動員数で収益は大差、背景に放映権

ところが2018年時点の1試合平均観客動員数は、NPBが2.9万人、米MLBが2.8万人とほぼ同水準。むしろ米MLBがやや下回っています。北米スポーツの収益が約30年で日本とここまでの差を付けたのは一体なぜなのでしょうか。各リーグの収益内訳を見ると、NFLとNBAは全国のテレビ・動画配信などでの「放映権」を中心とする収益が最大の割合を占めており、近年、放映権の額が急激に拡大していることが分かりました。

図2:米スポーツリーグの収益内訳
表:米スポーツリーグの放映権収益

リーグ単体の放映権収益は上表の通りいずれも非常に高額で、この10数年でそれぞれ2~4倍近く高騰してきました※4。NBAは2025年からの11年間の放映権料で再び2倍以上に高騰しています※5。日本では考えられない高騰の背景にある一要因は、日米の映像コンテンツに対する消費文化の違いでした。日本は地上波テレビでの無料中継がスポーツ観戦の需要を長く支えてきた一方、米国は2001年時点でケーブルテレビの世帯普及率が約70%※6と非常に高く、有料での視聴に対する抵抗感が薄い文化が長く根付いています。

この文化を背景に、NetflixやAmazon Prime Videoなどのサブスクリプション型動画配信サービス(SVOD)が規模を拡大。米国のSVOD利用者は52%(2015年)から8年で83%(2023年)※7へ広がりました。米国人はSVODに月平均77ドル(約1万2000円)※8支出するのに対し、日本人は月平均1,236円(有料動画配信への支出)※9で10倍近い差があることが、米国の有料視聴文化の根強さを裏付けています。

ファンの裾野を広げる、収益拡大の方程式

調査を進める中で、放映権の高騰の裏には視聴文化だけでなく、スポーツに関わる事業者による「ファンの裾野拡大」に向けた強力なコンテンツ戦略が働いてきたことが分かりました。「試合会場で観戦したい」「中継を観たい」と感じるファンの裾野を広げる複数のコンテンツ戦略が、チケット購入や中継のニーズを高め、結果としてチケット収益と放映権収益を高めてきたという方程式が見出せるのです。

この方程式を一層有効に作用させるのが、2010年初頭からのスマートフォンなどの普及でした。端末のディスプレイ、つまり「コンテンツのイグジットウィンドウ」を一人一人が個別に持ち、ウィンドウを介して無数のコンテンツを楽しめる世界がこの10数年で広がりました。自宅で腰を据えて観ていたコンテンツの消費手段の制約が取り払われたのです。その結果、スポーツはリアルタイム観戦に熱中するのに加え、試合録画をいつでも好きな場所で視聴したり、SNSで流れる好プレーやストーリーを切り抜いたコンテンツを観たり、競技に関わる人々の機微を映し出したドキュメンタリーに触れる機会が増えたり――。手軽に隙間時間でもスマホで様々なコンテンツを楽しめるようになりました。

スマートフォンの普及によるコンテンツの楽しみ方の変化を念頭に、「ファンの裾野拡大」で収益を高める方程式の中で、具体的にどういった戦略が世界で展開されてきたのかを見ていきます。

映像コンテンツによる裾野拡大

第1回で研究した世界最高峰のモータースポーツ「Formula 1」(F1)では、Netflixのドキュメンタリー番組『Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)』(2019年から毎年新シーズン配信)が公開されて以降、米国などで若い世代の女性を中心にファン層が急激に拡大しました。2021年のシーズン後半にF1を視聴していなかった36万人以上が、ドキュメンタリーを視聴後に2022年のF1レースを視聴※10。番組の影響を含む全体で2021年以降に5,000万人相当のファンが増加し、世界で計7億5,000万人超のファンを擁する競技へ成長しています※11。

こうした競技のストーリー性やパフォーマンスの卓越性を生かしたコンテンツ戦略が、SVODサービスの視聴者獲得・収益拡大、そしてスポーツ自体の価値向上と新規ファン獲得などの市場拡大の両面に大きく寄与し、放映権の高騰にも影響しました。米国のF1の放映権料も、2019年は年約500万ドル(5億5,000万円、3年間)だったのが、2022年には年7,500万~9,000万ドル(90億~108億円、3年間)と15~18倍に拡大した※12とされています。SVOD事業者の目線で見れば、スポーツは放映権料が上がってでも獲得すべき価値あるコンテンツだと目されているのです。

「ベッティング」による裾野拡大

もう一つの戦略が、試合の経過や結果などを予想してオンラインで賭ける「スポーツベッティング」です。アメリカでは2018年、スポーツベッティングを禁止する連邦法を違憲無効とする連邦最高裁判決が確定。以降50州中38州とワシントンD.C.で合法化されました※13。世界のスポーツベッティング市場は2022年に836億ドル(約11兆円)に達し、2023年~2030年にかけて年平均成長率(CAGR)10.3%で拡大すると予想※14されています。

試合開始から終了までの間に賭けの勝敗が判明するため、週1回以上ベッティングに参加するファンは全く参加しないファンより、約2倍も長くテレビでのスポーツ観戦に時間を割く傾向があります※15。試合の予測には競技や各チーム、選手に対する深い理解が必要です。ベッティング参加者は競技データなどの研究にも熱心に時間を割き、結果としてチームや選手に対する愛着も生まれていきます。

北米のスポーツリーグにとってスポーツベッティングは、データ分析を請け負う事業者への競技データ提供、ベッティングのライセンス提供などの直接的な収益拡大に加え、スポーツ中継の需要拡大と放映権高騰にも大きく寄与する重要な存在となっているのです。

スポーツベッティングは八百長や犯罪組織の資金流入防止、依存症抑止などの観点から慎重に取り扱うべき話題です。日本では国が認めた競馬や競輪、スポーツ振興くじなど、一部収益が国庫納付金となり、スポーツ振興助成などにも利用される公営事業を除き違法とされています。しかし日本のスポーツに対する海外からのベッティングは既に行われており、その賭け金は年間5~6兆円の規模で、日本のスポーツ界の逸失利益は大きいという研究もあります※16。こうした研究が更に進む中で、将来的に国内でも解禁される日が来ると私たちは考えています。

「アリーナ」による裾野拡大

私たちは、現地観戦をする人々に通常の体育館とは異なる非日常のエンターテイメントを提供できる、映像や音響にこだわった機能を備えた「アリーナ」の戦略にも着目しました。NBAでは全30チームに収容人数2万人前後のホームアリーナがあり、他のスポーツやコンサートにも利用されている上、周辺地域にはレストランやホテル、住宅などへの投資も誘発しています。

アリーナを軸の一つに据えたBリーグの改革構想は別の回で詳しく触れますが、日本でも次々とアリーナ建設が行われ、スポーツや地域社会の発展に不可欠なものとなっています。Bリーグで代表的なのはB1琉球ゴールデンキングスが拠点とする「沖縄アリーナ」(2021年竣工、最大1万人収容)です。アリーナ建設前の2018-19シーズンで約12万人だった総観客数は、アリーナができて3年が経過した2023-24シーズンで約2.5倍の31万人超にまで増え、入場料収入も拡大しています※17。

アリーナは現地で観るスポーツの価値を高める中核となる存在で、ただ「あればいい」だけの箱モノではありません。スポーツ観戦そのものを一層特別にする演出や、観戦体験のストレスを減らし快適に長く時間を過ごすことができる環境を実現し、現地観戦のニーズを高める重要な要素です。さらにスポーツ観戦のみならず、商業施設などの複合型で試合が無い日でも人々が集まる仕掛けを作ったり、周辺地域との一体開発で地域活性化を図ったりと、地域へもたらす経済効果の大きさも見逃せません。

日本における可能性の大きさ

私たちはバスケットボールに参入し、試合会場でチームを力強く応援するファンの方々の姿を目の当たりにし、「会場で試合に熱狂する高揚感には、代えがたい魅力があること」、そして「その高揚感がまた現地に足を運びたいと思わせてくれること」を手触り感を持って確信しました。スポーツは、ショートコンテンツや番組などいつでも楽しむことができる「非同期性」のみならず、会場やライブ中継での観戦を大勢が同時に行い、熱中して盛り上がれる「同期性」も兼ね備えている特性があり、これこそがスポーツ独自の魅力なのです。

米国の映像・ベッティング・アリーナによる戦略を踏まえた上で、私たちは「熱狂を求め、足を運びたくなる環境づくり」に様々な角度から工夫を凝らし、ファンの裾野を拡大していくことがスポーツビジネスの要諦であり、これらの戦略を通じた一定規模のチケット収入や放映権料の拡大は日本国内でも実現可能だと強く感じています。

次号お知らせ

Bリーグは、地域を基盤とした各クラブの経営力強化を重視する戦略「B.革新」を2021年に発表し、2026年から大幅なリーグ構造の改革を行う方針を掲げています。この構想が日本のスポーツ市場拡大や、日本の地域経済にどのような好影響をもたらそうとしているのか。次回は「B.革新」の全体像とその魅力に迫ります。


読了後アンケートご回答のお願い(3分程度)
今後の制作の参考にご意見をいただきたく、下記URLより回答のご協力をお願いいたします。
https://forms.gle/aGfJuwDFaxFxbMfK7


※1 出所:The Business Research Company「Sports Global Market Opportunities and Strategies to 2033」
※2 出所:Sportico「How Sports Teams, Leagues and Owners Make Money」(2024年2月16日)より、いずれも日本円換算は2022年平均約140円/ドル
※3 出所:NewsPicks「【市場規模調査】データがない現実にどう立ち向かう?」(2024年9月13日)
※4 出所:PwCコンサルティング合同会社「令和4年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(スポーツ産業にかかわる諸外国の動向調査事業)報告書」(2023年3月)
※5 出所:AP通信「NBA agrees to terms on a record 11-year, $76 billion media rights deal, AP source says」
※6 出所:KDDI総研(現・KDDI総合研究所)「米国のCATV事業者の動向 ~ComcastとTime Warner Cableを中心に~」(KDDI総研R&A 2010年11月号)
※7 出所:Statista「Share of consumers who have a subscription video-on-demand (SVOD) service in the United States from 2015 to 2023」
※8 出所:bango「Subscription Wars: Super Bundling Awakens」
※9 出所:一般社団法人日本映像ソフト協会、株式会社文化科学研究所「映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査2022」
※10 出所:Nielsen「観戦に駆り立てられるスポーツ・ドキュメンタリーが米国のファンをF1に引き込んだ理由」(2022年5月)
※11 出所:ロイター「F1 enjoying surge of support in Middle East, Nielsen data shows」
※12 出所:Sports Business Journal「F1 renews with ESPN for U.S. media rights through 2025」(2019年は110円/ドル、2022年は120円/ドルで換算)
※13 西村あさひ法律事務所「諸外国におけるスポーツくじ・スポーツベッティング関連法規制の動向①-米国(上)- 」より、2024年4月時点の数
※14 出所:Grand View Research「Sports Betting Market Size, Share & Trends Report Sports Betting Market Size, Share & Trends Analysis Report By Platform, By Betting Type」
※15 出所:Deloitte「Does TV sports have a future? Bet on it | TMT Predictions 2019」
※16 出所:スポーツエコシステム推進協議会「スポーツDXファクトブック」
※17 琉球ゴールデンキングス発表資料より

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