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地域に「アリーナ」を生み出す条件とは何か?全国比較とビジネス観点で考える

B.LEAGUEが主導する構造改革「B.革新」により、いま全国各地でアリーナ建設計画が次々と立ち上がっています。スポーツ庁によれば、2026年1月時点で全国40件の新設・建て替え計画が進行中であり、まさに「アリーナ戦国時代」の様相を呈しています。

新リーグの最高峰「B.LEAGUE PREMIER」(Bプレミア)へ参入するための最大のハードルは、「5,000席以上」を含むアリーナ基準の達成です。それぞれの地域がアリーナの存在によって盛り上がっていくことは間違いない一方、総事業費が200億円を超える事例も多く、「各地域がどのようにその投資額を回収していくのか」という論点を避けて通ることはできません。

私たちのグループ子会社である徳島ガンバロウズ(2023年にB3リーグ参入)は2026年、Bプレミアに次ぐリーグで旧B2にあたる「B.LEAGUE ONE」(Bワン)に昇格しました。私たちが考えるアリーナの目的とは、徳島を盛り上げること、スポーツを通じて日本を盛り上げることが大前提ですが、それを継続していくためには、ビジネスの観点を外すことはできません。アリーナはクラブの売上増への貢献が見込まれるものの、施設の利用費などの大幅なコスト増にも反映されます。

したがって一過性の盛り上がりを目指すことではなく、地域を盛り上げ続けるためには、クラブ、そしてアリーナ自体が、ビジネスとして採算を取れる構造でなければならないのです。国や自治体などがアリーナ整備を積極的に推し進める前向きな動きに感謝しつつも、私たちは「アリーナの持続可能性」を真剣に考え、常に様々な挑戦をしていく必要があると考えています。

私たちの求めるアリーナはどういったものであるべきなのか。全国のアリーナ整備の事例から、各地域ごとの特性を分析していきます。


全国のアリーナを「費用」と「地域特性」に分けると?

近年のアリーナ整備における整備主体は「民設民営」「公設民営」「官民共同整備」の3パターンに分けることができ、運営は民間事業者が担うものばかりです。

「民設民営」は東京都、兵庫県など都市部の大規模アリーナが中心です。「公設民営」は佐賀県、香川県、沖縄県など。「官民共同整備」の例は様々なスキームがありますが、費用を官民が互いに負担する例にはIGアリーナ(愛知、約400億円)、オープンハウスアリーナ太田(群馬、約83億円)が存在しています。

そうした全国の新アリーナの一部を「費用面の高さ・安さ」、「都市・地域」で分けて見てみると、以下のような図にまとめることができます。

図から傾向を読み取っていくと、右上の「都市・高」は主に民設民営で、大規模投資によって最先端技術やグローバル基準のアリーナを目指すものが多くみられます。

左上の「地域・高」では、主に公設民営であり、周辺地域で最大規模のスポーツ・コンサート興行などの多目的拠点としての活用を目的としている例が多い状況です。

左下の「地域・安」は例が少ないものの、計画時点から民間企業が強く関与し、費用面・座席規模ともに比較的コンパクトに収めながら独自のエンターテイメント性を追求する傾向にあります。

なお、図の下部にある「改修」は、2億~30億円前後が多く見られ、既存の施設を用いて可能な限り低コストで「Bプレミア」の基準を満たすことを目指すものです。都市部よりも地域で行われる傾向にあり、クラブ側が改修費の全額や半額程度を負担・調達する例が多くあります。


2.「地域におけるアリーナ」の2つのタイプと、代表事例

以上のことから私たちは、地域におけるアリーナ整備について、大きく以下の2つの場合分けが可能だと考えました。

①地域内または近隣県で、同規模の大型アリーナがない場合:
・近隣県の人が集まる興行も行える大型多目的拠点の新設を、公設民営を軸に比較的大規模な投資で目指す

②地域内または近隣県に大型のアリーナが存在する場合:
・エンターテイメント性などに独自の特徴を持ち、機能の品質を保ちつつも、低コストなアリーナを目指す

①の代表例は、整備費162億円、公設民営型で2021年にオープンした沖縄市の「沖縄サントリーアリーナ」です。沖縄市で1万人規模のアリーナ整備の議論が始まった当時、琉球には約3,000人規模の沖縄市体育館があり、「住民福祉に予算を回すべき」「もっと小規模でよいのでは」といった声もあったといいます。

当時の沖縄県内には、スポーツ・コンサートなどの興行が可能な1万人規模の屋内施設が存在しませんでした。そこで沖縄市は「稼ぐアリーナ」というコンセプトを掲げ、ビジネスとして収益を上げる事業計画を作ったうえ、建設プロジェクトのコスト削減や工期短縮も実現しました。

2016年4月から2年間、沖縄市副市長としてアリーナ整備に尽力したのが、現在は徳島県で副知事を務める上田 紘嗣氏(総務省出身)でした。「『アリーナって何?』というところから私はスタートしました。1万人規模なんて必要ないのでは、という声もありました」。そう語る上田氏は、基本構想を建設計画へと具体化するプロジェクトリーダーとして、時間をかけて「なぜ1万人規模が必要なのか」を市民や議会に説明してきました。

上田氏は「最も大切なのは、まちづくり全体の中でアリーナをどう位置づけるかの戦略です」と語ります。上田氏は沖縄市にとっての「稼ぐアリーナ」のコンセプトを明確にし、ビジネスとして収益を上げる事業計画を作り、丁寧に合意を形成していきました。さらに、建設プロジェクトのコスト削減や工期短縮まで実現しました。遠回りに見えても、それこそが最短の道だったのです。

収容人数は約10,000席。NBA型のすり鉢構造を備えるなど、ユーザー体験を重視した設計をしています。公式サイトに掲載されたイベント情報によると、2025年はBリーグの試合を含め、メインアリーナで74イベント110日以上、前日の設営日があると仮定すると190日近く(約52%)が稼働。地域の人々や県外客が集まる拠点として明確に定着しています。


3.四国の状況から、徳島のアリーナはどうあるべきか

では徳島の場合は、どのようなアリーナを整備することが必要なのでしょうか。

徳島が①と②のどちらかを選び取る場合、四国の他県の状況を踏まえることは欠かせません。

徳島を除く四国の他の3県の事例を見てみると、香川は①に近く、愛媛は②、高知は①に近い状況であることが分かります。

香川県:
・公設民営で約200億円
・メインアリーナは1万人規模
・Bクラブは「香川ファイブアローズ」(Bワン)

愛媛県:
・サイボウズが民間主導で110億円程度を想定し、建設の是非を検討中
・5,000席以上を満たす想定
・Bクラブは「愛媛オレンジバイキングス」(Bワン)

高知県:
・公設により216億円見込みで計画中
・メインアリーナは5,000席以上
・Bクラブは未設立(2026年8月27日、「設立準備委員会」が発足)

徳島が①の大型アリーナを目指すならば、沖縄市に「興行が可能な1万人規模の屋内施設」がなかったことが1万人規模のアリーナ実現に繋がったことを踏まえ、県内、そして四国4県で競合しない座席規模――つまり1万人より多い、または5,000席でなく7,500席前後を視野に入れていく必要があります。

また、②の低コストアリーナを目指すならば、建設費を可能な限り抑えながらも、音響や機能の質を高めつつ、これまでにない独自の売りを生み出すことが求められていくことになります。

徳島県では2025年6月、後藤田正純知事が新アリーナの候補地を、大型商業施設にほど近い「旧徳島東工業高校跡地」とすることを発表し、2026年12月までに整備の基本計画の策定を目指しています。そして有識者による検討委員会で、アリーナのあるべき姿に対し慎重に議論が深められています。この議論が進む中、「日本バスケの聖地」と呼び声高い沖縄サントリーアリーナの整備を推進した上田氏が副知事を務めていることは、徳島県にとって非常に大きな力になると、私たちは期待しています。


4.四国における奇跡的な重なり

もう一つの重要なポイントは、四国4県のうち愛媛県、高知県、徳島県で現在、ほぼ同時にアリーナ建設の議論が進んでいることにあります。ここから考えられる可能性の一つが「同じアリーナを3県に整備する」という選択肢です。

B3リーグの最終シーズンで優勝を果たした「立川ダイス」(Bワン)は2017年、ホームアリーナである「アリーナ立川立飛」(収容人数3,275人)を、構造設計の株式会社JSCが開発した「ローコストアリーナ」を活用して建設費10数億円、着工からおよそ半年の短工期で整備しました。ローコストアリーナは2017年当時で5,000席規模が約30億円とされており、資材価格高騰などを考慮すると、近年の同規模の席数を持つアリーナ計画が200~300億円であることから100億円前後と推察されます。

さらに、JSCは標準化された部材生産によるコスト削減を行っているうえに、全国6都市9箇所にあるライブハウス「Zepp」が持つ、興行特化・仕様標準化による低コスト化と高い品質・利便性の思想が取り入れられているといいます。これをもし愛媛、高知、徳島で同様の設計で整備し、部材や設備を一括で製造・発注することができれば、音響面でも高い品質を誇りつつ、整備費を一層圧縮することができる可能性もあるのです。

3地域の内装がほぼ同じものであれば、コンサートなどの興行における図面作成・演出変更の負担や設営費用も低減され、四国を巡りやすくなる可能性まで出てきます。また、施設運営においては、3県の運用ノウハウを共有し合い、運営品質を一層高めていくことも可能となるはずです。こうした興行・運営側のメリットとともに、利用者側にとっても高品質な「観る」イベントが大幅に増え、四国のイベントシーンが一体として発展していくことを見据えることができます。

低コストでのアリーナ建設は従来、民間主導で行われる事例が多かったものの、世界的な資材・建設費高騰を鑑みると、今後は公設アリーナでも同様の低コストの手法がより多く検討されていくことになるでしょう。ニーズが高まるにつれて、低コストのアリーナは今後これまでの常識を覆すほど品質のレベルを一層高めていく可能性があります。

そして直近の大きな動きとして、四国で唯一B.LEAGUEのクラブがなかった高知県では、8月27日にクラブ設立に向けた「設立準備委員会」が発足しました。四国4県全てでクラブが生まれ、各地にBプレミア基準のアリーナも整備された将来には、シーズンオフ期間中の4クラブによる「四国ダービー」の定期開催も構想することができます。

四国限定での試合を行うことで、各県同士が対抗意識を燃やす新たな「お祭り」的なイベント化が期待できるうえ、アリーナを軸に4県を行き来する観光も兼ねたツーリズムが活発化する可能性があります。選手にとっても、長距離移動なしでコンディションを維持しながら実戦機会を得られ、四国のプロシーンの更なるレベルアップを狙うことができるはずです。

このように、徳島県、四国はいま、①の公設・大型アリーナ、②の低コストアリーナそれぞれの方向に大きなポテンシャルが秘められています。今後、徳島県や四国全体にとって最も適切なアリーナの姿が合意に至り、早期に徳島県にアリーナが整備されることを、私たちは強く願っています。

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