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日本の本を世界へ届けるために──Seven Seasのグループ参画、海外展開への不退転の覚悟

こんにちは。メディカム編集部 経営企画チームです。

2026年3月2日、メディアドゥは北米最大の独立系マンガ出版社であるSeven Seas Entertainment, LLC(Seven Seas)の全持分を海外子会社のMedia Do International, Inc(MD-i)が取得し、連結子会社化(孫会社化)することを発表しました。取得価額は8,000万米ドル(約124億円)。2017年の出版デジタル機構の買収を上回る、当社として過去最大のM&Aです。

国内最大手の電子書籍取次が、なぜ海の向こうの「紙を扱う出版社」を買収するのか。その問いに正面から向き合うべく、3月16日に出版業界関係者を招いた説明会「日本コンテンツと世界を繋ぐ架け橋」を開催しました。

合計437名(現地234名・オンライン203名)にご参加いただき会場は満席に。メディアドゥ代表取締役社長 CEOの藤田恭嗣、MD-i代表取締役の塩濵大平、Seven Seas CEO & FounderのJason DeAngelis(ジェイソン・デアンジェリス)氏が登壇し、買収の背景とグループとしての今後の構想をお伝えしました。


海外戦略における「ラストピース」と不退転の覚悟

冒頭に登壇した藤田は、今回の買収に至った背景を語りました。

「近年、出版社の皆様から『自社の作品を海外に届けたいが、流通の手段がない』というご相談が増えていました」。背景には、日本のコンテンツ産業の海外売上高が2024年に6兆円を超え、鉄鋼や半導体をしのぐ輸出産業へと成長しているという追い風があります。政府は2033年までに20兆円への拡大を目指し、令和7年度補正予算で556億円の関連予算を確保しました。

こうしたコンテンツ産業への追い風が吹くなか、メディアドゥも2025年4月に発表した中期経営計画で日本のコンテンツを世界へ届ける「ゲートウェイ」への進化を掲げました。メディアドゥには国内2,200社以上の出版社と直接取引し、年間約90万点のコンテンツを預けていただける基盤がすでにあります。

しかし、世界の出版市場約22.6兆円のうち89%は紙の本が占めており、米国も9割が紙です。藤田は「電子書籍のプロとして皆様とどれだけ頑張っても、マーケット全体の1割の中の何パーセントかにしか届かない」と率直にこれまでの状況を語りました。

コンテンツの基盤、翻訳業務を支援する仕組み、出版社との深い関係。海外戦略に必要なピースをそろえてきたなかで、最後に残っていた課題が「紙の書籍流通」でした。広大な国土をカバーする配送網、現地の複雑な商慣習への適応、そして書店における棚(売り場)の確保など、物理的かつ多層的なプロセスが求められます。ただコンテンツを預かるのではなく、藤田が説明会で語ったように「書店設計やインセンティブ設計まで自ら踏み込める体制が必要」です。

メディアドゥがSeven Seasとの提携ではなく「買収」を選んだのは、そこまで踏み込まなければ紙の流通には入り込めないという判断からです。「不退転の思いで海外に紙の本を売り込んでいく覚悟と決意を、会社のリスクとして明確に定義した」と藤田は出版業界の皆様を前に宣言しました。

その相手となるSeven Seasとの接点をつないだのは、2016年から米国で当社の海外事業を担ってきたMD-iの塩濵です。「会いたくても会えないジェイソン」と藤田が振り返るように、Seven Seasとの関係構築は容易ではありませんでした。しかし、MD-iの代表として塩濵が現地で積み重ねてきたネットワークが今回の買収につながりました。

2025年9月にニューヨークで初めて対面した藤田とジェイソン氏は、ともにゼロから会社を育てた起業家として意気投合。11月にはメディアドゥオフィスで提携に合意し、詳細な条件を固めていきました。Seven Seasの参画によって、メディアドゥの海外戦略の”ラストピース”が埋まったことになります。


なぜ、「Seven Seas」だったのか

では、Seven Seasとはどのような出版社なのか。

Seven Seasは2004年にジェイソン氏が創業し、これまで北米マンガ市場における「独立系」No.1の地位を築いてきた出版社です。高校時代に日本文化にひかれ、ハワイ大学で日本語・日本文学を専攻し、卒業後に来日して6年間を過ごした経験を持つジェイソン氏は、マンガ翻訳家としてのキャリアを経て同社を立ち上げました。

説明会では「今日は皆様へのラブレターです」と出版社関係者に語りかけ、「日本の出版社との関係こそがSeven Seasの基盤である」と繰り返し述べました。

事業規模としては、2024年12月期の売上高が78億円、営業利益は16億円。営業利益率は約20%と高い収益性を維持しています。売上構成は紙書籍83%、電子書籍17%です。累計で1,300シリーズ以上のライセンスを取得し、5,000タイトル以上を刊行。今年の年間発行点数は1,000タイトルを超え、米国の他の大手マンガ出版社の数倍にあたる規模です。

Seven Seasの強みは三つあります。

1. 「独立系」としての目利き力
Seven Seasは特定の日本の出版グループに属さない「独立系」だからこそ、100社以上の出版社のコンテンツを幅広く取り扱えるポジションを確立してきました。メディアドゥが「独立系」電子書籍取次としてあらゆる出版社と直接取引している構造とよく似ています。
この立場を土台にしながら、海外出版の体制を既に自社で整えている出版社のコンテンツを含め、英語圏で広く売り伸ばすことができる作品を見出すことのできる独自の“目利き力”も兼ね備えています。この目利きができる理由を「私たち自身が“オタク”だからです」と語るジェイソン氏の目には、創業時から変わることのない日本のコンテンツへの愛が滲んでいます。

2.盤石な流通基盤
Seven Seasは2021年に、世界最大の出版社であるPenguin Random Houseと流通提携を締結し、米国最大規模の書店チェーンBarnes & Noble(700店舗超)、Books-A-Million(250店超)をはじめ全米の書店への販路を確保しています。この流通網は北米にとどまらず、英語圏全体に及びます。

3.ジャンルの多様性
Seven Seasはファンタジー、ロマンス、SF、日常系、ホラー、コメディ、百合、BL、TLなど幅広いジャンルの作品を取り扱い、それぞれの読者層を開拓してきました。Seven Seas、Airship(ライトノベル)、Steamship(女性向けレーベル)、Ghost Ship(成人向けレーベル)、Siren(オーディオブック)、Girls’ Love、Boys’ Love、Danmei、Webtoonsと9つのインプリントを展開し、多様な読者に届く体制を築いています。塩濵はこの点について「Seven Seasこそが全方位のカテゴリの作品を大きな市場に育てる担い手として世界で評価されている」と語ります。

※インプリント:出版社におけるブランドやレーベル、シリーズなどの個別の部門


成長を続ける北米マンガ市場

ジェイソン氏は、Seven Seasが事業を展開する北米マンガ市場の現状と将来の見通しについても詳しく説明しました。

「米国は今や日本に次ぐ世界最大級の漫画市場です。かつてニッチだった漫画は、ファンタジーやSFと肩を並べる主要ジャンルに成長し、大手書店では漫画セクションが最大の売り場面積を占める店舗も出てきています。

市場をけん引しているのは新しい読者層です。この10年で初めて漫画を読んだ若い世代が急増しており、SNSやアニメ、書店、図書館を通じて漫画と出会っています」

さらにジェイソン氏は「シリーズで物語にのめり込む体験を初めてするのが漫画だという読者が多い。そして20代で始めた読書を30代以降も続けていく」と述べました。漫画とともに育ち、読み続ける世代が厚みを増していることは、市場の安定成長を支える基盤になります。

市場の先行きも明るい材料があります。JETRO資料によれば、北米のマンガ市場は毎年2桁成長が見込まれ、2023年の9億3,520万ドルから2030年には38億8,740万ドルへ、年平均成長率23.2%で拡大すると予測されています。

オーディオブックも新たな成長領域です。Seven Seasは2023年にオーディオブック事業を開始し、3年弱で250作品以上をリリース。米国のオーディオブック市場は年間成長率22%超で伸びており、通勤中やウォーキング中など「ながら」で楽しめるフォーマットとして、ライトノベルを中心に日本コンテンツの新たな接点を生み出しています。


メディアドゥ × Seven Seasで何が変わるのか

では、両社がグループになることで具体的に何が変わるのか。説明会では、3つの注力領域が示されました。

第一に、紙書籍の拡大です。Seven Seasの翻訳に関する信頼と制作体制を維持・拡大することに加え、営業部隊の強化により、既存書店との連携深化と新規書店の開拓を進め、売り場面積と販売書店数の拡大を目指します。Penguin Random Houseとの流通提携は、日本のコンテンツを北米の書店に届けるための最大の武器です。

第二に、電子書籍の強化です。メディアドゥが持つデジタル流通の知見とキャンペーンノウハウをSeven Seasの電子書籍事業にも投入し、現在売上の17%にとどまる電子書籍比率の拡大を図ることができます。米国の電子書籍市場はまだ全体の約10%にすぎず、成長の余地は大きいと考えられます。

第三に、新規領域への展開です。マーチャンダイジング(キャラクターグッズの企画・販売)で日本IPの価値をさらに広げるとともに、多様な出版展開を進めていきます。塩濵は「フランス、イタリア、スペイン、中南米、さらには中東やアフリカまで、漫画を求める声が世界中に広がっている」と語りました。英語版を中心とした展開を基盤に、最適な形で読者に届けていく構想があります。

メディアドゥの年間90万点超のコンテンツが集まり続けるポジションと、Seven Seasが22年かけて築いた全米の書店流通網および翻訳出版の制作体制。独立系の電子書籍取次と独立系の出版社だからこそ、特定の出版グループに限ることなく、あらゆる出版社のコンテンツを世界に届けることができるのです。


「継続性」と「安定性」── 出版社の皆様への約束

ジェイソン氏は、メディアドゥグループへの参画にあたって二つのキーワードを掲げました。「継続性」(Continuity)と「安定性」(Stability)です。

「Seven Seasがこの22年間で築いてきた翻訳品質と出版姿勢は、グループに入った後もそのまま守り続ける。日本の出版社の皆様の作品を継続的に届け、安定的に供給していく。出版社の皆様が素晴らしい作家を発見し、作品を生み出し、世に送り出している。Seven Seasの役割は、そのコンテンツに合った読者を見つけ、世界に届けることに過ぎません」。ジェイソン氏のこの言葉は、メディアドゥグループの一員となっても、Seven Seasの原点は変わらないという意思表明です。

「日本のコンテンツを守り、育て、世界の読者に届ける。そのことに人生をかけてやりたい」。そして「メディアドゥグループの一員となることで、日本のクリエイター、出版社、世界中のファンをつなぐさらに強力な架け橋となれることを光栄に思う」と、ジェイソン氏はプレゼンテーションを締めくくりました。

説明会後のアンケートでは「日本文化の保護も含めた海外展開として非常に前向きな印象を受けた」「Seven Seasの方針や取り組みを初めて直接聞き、良い機会となった」「海外でのコミック・ラノベなどの興味・関心や市場状況を知ることができた」「翻訳出版の刊行点数の拡大を望む」といったお声をいただきました。今回のSeven Seasのメディアドゥグループ参画を歓迎いただき、前向きな反響を寄せていただいたことを、この場を借りて感謝申し上げます。

なお、2026年3月17日には「機関投資家・アナリスト向けスモールミーティング(Seven Seasの当社グループ参画と海外展開について)」を開催しており、2026年4月6日にQ&Aの要旨を公開しました。

2026年3月開催スモールミーティングにおける主なQ&A(PDF)

おわりに

これまで翻訳出版されてこなかった日本の本は、既刊も含め、世界にとってはすべてが「新刊」です。電子書籍、紙の本、オーディオブック。届け方を問わず、日本の物語を世界80億人の読者へ届ける「ゲートウェイ」として、メディアドゥグループは全力を尽くしてまいります。
出版社の皆様からの海外展開に関するご相談やお問い合わせは、メディアドゥ担当者や、ウェブサイトのお問い合わせフォームへご連絡ください。

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