CEOメッセージMESSAGE from the CEO

統合報告書2022(2022年8月31日発行)より

テクノロジーによって広がる可能性をコンテンツ業界が十分に享受できるよう、当社の中に取り込み、私たちがイニシアティブを取ってコンテンツを取り巻くプレイヤーにインストールしていきます。



01. メディアドゥは時代の転換点にある先んじて挑戦することで、社会に存在意義を示す。


今から十数年前、当社グループのビジョンである「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ」を定めた背景には、創業間もない当社が着うた®配信事業を手掛けた頃から一貫して、電子書籍だけではなく、あらゆるコンテンツの創出・流通に貢献していきたいという強い思いがありました。当時から将来の構想としては描きつつも、経営リソースが限られていたことから、機会をうかがいながら非常に大きな成長を遂げる電子書籍市場に軸足を置き、今日に至りました。そこから時は経ち、現在メディアドゥは、国内電子書籍流通における圧倒的No.1のポジションを獲得しています。その過程では、(株)出版デジタル機構の買収と統合、持株会社化、執行役員制度の導入や人事制度の見直し等、経営基盤の強化に努める一方、出版社や電子書店との確固たる関係性の構築や業界の課題を解決するシステムやソリューションの提供に全社一丸となって取り組んできました。加えて、当社として上場後初の資金調達の実施や(株)トーハンとの資本業務提携を含む複数のM&Aも実施し、成長スピードを緩めることなく、先んじて挑戦を続けることで、自社の成長とともに業界の発展に貢献してきた自負があります。

そして今、メディアドゥグループは大きな時代の転換点、分水嶺にあると感じています。テクノロジーの発達によって世の中はこれまで以上に便利になり、余暇の時間も増え、コンテンツも従来以上に次々と生まれてくる世界がすでに現実として存在します。もはやコンテンツは一部の天才やプロだけが生み出すものではなく、あらゆる人にその可能性がもたらされてることを示すと同時に、その需要もこれまでにない速度で拡大しています。

代表取締役社長 CEO 藤田恭嗣

そうした大きな潮流の中で私たちが進むべき方向はどこか。それはこれまでの電子書籍流通を通じて「ひとりでも多くの人」へコンテンツを届ける存在であることはもとより、培ってきた信頼とポジションを活用し、コンテンツに寄り添う立場として、よりコンテンツIPホルダーと協働しながら「ひとつでも多くのコンテンツ」を生み出すことにも挑戦し、業界全体のイノベーションを誘発していく存在へとトランスフォームすることです。

テクノロジーとコンテンツのあり方は、スマートフォンの台頭によって劇的に変化しています。もはや人々の生活の一部となっているこの小さなデバイスを通して、いかにコンテンツIPホルダーに収益機会、ユーザーに優れた顧客体験を提供できるかが問われています。同時に、優れた改ざん耐性を有するブロックチェーン技術の発展は、デジタル上でのコンテンツのプレゼンスを飛躍的に向上させる可能性を秘めています。

こうしたことを踏まえて私たちは、これまでの均一でコピー可能だったデジタルコンテンツに“個数”の概念を持たせ、資産として価値を担保し、流通させることができる、DCA®(デジタルコンテンツアセット)を発明したのです。これは、音楽・本・映像など様々なデジタルコンテンツの価値をさらに高めるビジネスモデルを提案することで、アーティストなど作品を作り出すクリエイターに対する新たな選択肢、そして新たなユーザー体験を提供するというまさに「著作物(コンテンツ)の健全なる創造サイクルの実現」というミッションそのものの体現であり、当社グループのありたい姿に向けた挑戦です。私自身、今のデジタルコンテンツは娯楽としての消費財、消費活動の対象にとどまっているように見受けられ、非常にもったいないと考えます。なぜならば、デジタルコンテンツの真価は、ユーザーにとって生産・創出活動の対象になってこそ発揮されると考えているからです。先に述べたようにデジタルコンテンツはつくり手も含め、そのあり方が大きく変化しています。これまでのフィジカルのコンテンツが中心だった世界では、ユーザーが生産・創出活動へ直接関与できる余地は非常に限られていましたが、それがテクノロジーによって大きく広がっています。いちユーザーが消費活動のみならず生産・創出活動にも関与する仕組みが構築できれば、さらに多くのコンテンツが世の中に生み出され、企業としての成長はもとより、社会の文化的な豊かさの発展にも貢献できます。メディアドゥの存在意義とは、コンテンツとテクノロジー、コンテンツと人、人と社会を繋ぐ媒介であり、その実現に向けて絶えず変化・進化し続けることだと考えています。そして、こうしたことを踏まえて、当社は2022年4月に新たな中期経営計画を策定・公表しました。

02. 前中期経営計画の振り返りと2022年2月期の総括グループの経営基盤が強化され、新たな挑戦に臨む足掛かりが整う。


当社グループでは、2018年7月に公表した前中期経営計画において「電子書籍流通全体を支える存在」となることを目標として、既存の仕組みにおける電子書籍市場拡大を支援する「Legacyを作る」、先端技術活用によりさらなる市場拡大に取り組む「Legacyを創りに行く」、そして「事業拡大に向けた積極的な投資実行」の3つの戦略骨子と、5つの重点施策を掲げ、実現に向け取り組んできました。この4年間における最大の成果は、2017年3月に実施した出版デジタル機構の買収と統合を経て、国内電子書籍流通として圧倒的No.1のポジションを確固たるものにできたことにあります。この「Position」とは当社にとっての最大の強みであると同時に最大の資産でもあります。なぜなら、これは出版社や書店との信頼関係の積み重ねとノウハウの蓄積によって形成されており、一朝一夕に模倣できるものではありません。また両者の間に位置するからこそ常に出版やコンテンツにおける共通課題を認識でき、共通価値の創出を発想の起点とすることができます。業界No.1のシェアとはその財務的側面ですが、真に重要なのはポジショニングによって今後の様々な可能性に挑戦できるという非財務的な資産を構築できたことです。

業績についても、この4年間で売上高は2倍となる1,000億円を突破し、前中期経営計画の中で目標とした業績も1年前倒しで達成することができました。EBITDAにおいては、新規事業の投資フェーズ継続を決断したことで、遺憾ながら目標未達となりました。一方で戦略目標の定性面へと目を向けると、掲げていた5つの重点施策において、概ね全ての項目を達成することができたものと評価しています。

また、当期に焦点を当てると、業績面では売上高が前期比25.4%増加し1,047億円、EBITDAについても前期比14.7%増加の39.2億円と着実に成果を上げることができました。トーハンとの資本業務提携による業界DXの推進や「FanTop」の立ち上げによるデジタルコンテンツの価値向上など、ポジションを生かした事業が進展し、大きな変化の途上にあったことから、予定していた中期経営計画の公表を1年延期しました。一方で、この1年の間で当社グループが新中期経営計画において取り組む新たな事業領域の方向性に関する解像度を大きく引き上げることができたのではないかと思います。これまでに積み上げた成果を最大限に活用しながら、新中期経営計画に掲げる目標を確実に達成していきます。

03. 新中期経営計画に基づく成長戦略の方向性「信頼」を土台に、新たな収益の柱の構築を完遂する。


新中期経営計画では、「これまで培ってきたメディアドゥの『信頼』を土台に、新たな収益の柱の構築を完遂する」ことをキーワードとして掲げました。まず、事業領域の進化という観点では、当期までに築いた足掛かりを生かし、DCA®の布石実現に向けて「コンテンツ業界に貢献するメディアドゥ」へと進化を果たします。同時に、安定的な収益成長という観点では、前中期経営計画で積み残した課題である電子書籍流通事業以外の収益の柱の構築を目指します。

代表取締役社長 CEO 藤田恭嗣

具体的には、当社の中核事業である電子書籍流通事業に関しては引き続き当社の主力事業と位置付けつつ、当社がこれまでに培ってきた「Position」と「Technology」という強みを発揮できる注力領域として、これまでに立ち上げてきた新規事業を「インプリント事業」「出版ソリューション事業」「国際事業」「ファンマーケティング事業」という4つのセグメントに整理し、戦略投資事業を特定しました。電子書籍流通事業から得られる安定収益を源泉としてこれまで以上に戦略投資事業へと重点的に投資を振り向けることで、中期経営計画最終年度となる2027年2月期には戦略投資事業から得られる売上高の構成比を現在の8%から25%、連結EBITDAにおいても50%の構成となるよう、成長を加速させていく考えです。

当社の主力事業である電子書籍流通事業においては、目指す姿として掲げる「さらなる流通カロリー抑制と機能追加により業界のインフラとしての役割を強化」の実現に向けて、「流通カロリー抑制による電子書籍市場拡大」「データマーケティングなど新たな機能追加」「新規商材の確立、文字もの電子書籍市場拡大」という3つの施策に取り組みます。特に現在ではコンテンツ数はもちろん、キャンペーン数や出版社、電子書店数のいずれも増加していることから、そのマトリックスを上手く管理し、安全かつ効率的に電子書籍が流通するための仕組みと規格を提供することが、取次事業者である私たちに最も求められていることだと考えています。加えて、これらの施策により、引き続き業務効率化による流通カロリーの抑制と、流通スピードの向上、例えば入稿から販売までの期間短縮といったオペレーショナルエクセレンスの強化に努め、電子書籍流通事業をさらに強固な事業へと深化させていきます。

戦略投資事業については、特に出版業界への貢献という観点ではトーハンとの連携で実現した「NFTデジタル特典付き出版物」に大きな期待を寄せています。日本国内の出版市場規模は1996年の約2.6兆円をピークに、足元では約1.2兆円まで縮小*しており、書店は大変苦しい事業環境に長らく直面しています。当社もその解決に向けて貢献できる手段がないかを模索し続けてきました。全国の特に地方では書店の減少が顕著になっています。私自身、過去の経験談として、地元の書店が撤退したことをきっかけに自分が住んでいた地域で文化的な会話が大きく減ったことをよく覚えています。そして、日本の未来においてこれは深刻な社会的課題になり得るのではないかと考えました。そうした課題意識もあり、「NFTデジタル特典付き出版物」を実現し、2021年10月の流通開始から半年間で15タイトル程の流通を手掛けてきました。本、雑誌、写真集など幅広く手掛け、中でも、(株)扶桑社が刊行する『週刊SPA!』では、価格が通常版よりも高く設定されているにもかかわらず特装版の冊子の売れ行きが非常に好調であったことから、2022年7月には出版業界初、発行全部数にNFTデジタル特典を付けての刊行に至りました。

このようにトーハンとメディアドゥは資本業務提携を行ってからわずか半年の間に、新たな出版のあり方を提案し、ユーザーの楽しみ方の選択肢を増やすと同時に、出版社や書店に対して収益機会や読者との接点創出といった新たな価値を提案する、まさに出版構造のDXを図ってきました。これは今後のコンテンツビジネスにおける大きな機会に発展していくものと考えています。元々、どの業界においてもインターネットやデジタルはフィジカルを侵食・代替する性質がありましたが、ブロックチェーンやNFTといった新しい技術はフィジカルを補完することができる、いわば「フィジカルと共創するテクノロジー」だと考えています。それが今回の「NFTデジタル特典付き出版物」であり、短期間での実績ではありますが一つの突破口として社会実装し、その効果を証明できたことは重要な革新であったと評価しています。

コンテンツの中でも、音楽や映像と比べて本は店舗(=書店)というリアル拠点がまだ数多く存在します。この書店を「コンテンツ発信拠点」へと昇華させることで、よりたくさんの人々、潜在的ユーザーに対して書店へ行く楽しみを提供することが、私たちが提唱する新しいコンテンツビジネスのあり方です。効果の実証を確認できた次の段階は、当社がどれだけの量・タイトル数を調達できるか、そしてそれらを「FanTop」というNFTマーケットプレイス上で永続的に売れる仕組みとして構築していくか、という点が肝要です。今はまだ量、プレイヤーともに「点」の取り組みですがあらゆる出版社や取次、書店といった業界プレイヤーを巻き込み、点から線へ、そして線を繋いで面として業界全体へと広げていくことが、共通課題への打開策でもあり、共通価値の創出なのだと確信しています。それがひいては「FanTop」というプラットフォームの価値向上に繋がり、結果として会員数の増加や売上といった目に見える財務的な価値へと繋がっていくのだと考えています。進むべき方向性が明らかとなりましたので、今回の中期経営計画期間においてしっかりと推進していくことによって業界全体を盛り上げていきたいと考えています。

他方、海外展開についてもこれまで以上に注力していく考えです。前中期経営計画を公表した5年前と比較すると、FirebrandグループとSupadüのグループ入りによって国際事業の飛躍に向けた基盤が強固なものとなりました。特にFirebrandグループは私たちと同様にBtoB企業、いわば業界の裏方として、35年という長い歴史の中で業界におけるプレゼンスを確固たるものにしている企業であり、海外の出版業界の課題や動向について精通しています。具体的には、書籍の書誌情報を中核とした出版EPR事業、情報配信事業、電子書籍配信事業の複合事業を展開しており、米国大手出版社をはじめ北米・英独など欧州で100社以上の顧客が利用するシェアNo.1のサービスです。こうした海外出版社と強固な関係を築いている彼らのポジションを生かしながら、出版業界におけるDXで先行する欧米出版業界で最先端のIPとノウハウを活用して日本やアジアへサービスを展開するとともに、グループの海外進出拠点とすることで世界的にもDCA®としてデジタルコンテンツの価値を高めていきます。また、海外展開に投資を行うための財務基盤についても数年前と比較して強固なものとなっていますので、情報とファイナンスの両面から、強化に向けた足掛かりが構築できたものと捉えています。今後はグローバルへの展開という観点でも、成長を加速させていきます。

* 出所:出版科学研究所

04. サステナビリティ経営に対する考え方逆風が訪れた局面を乗り越えるための備えを、企業全体で追求する。


当社ではこれまでも、企業として社会課題の解決と持続的な成長を両立させ、企業価値の向上を果たしていく枠組みを構築するべく、サステナビリティ方針の策定やESG重点テーマの設定とそれに基づく戦略を推進してきました。これに加えて、統合型リスク管理の充実と、社会課題を踏まえた事業機会の最大化を図るべく、2022年6月にはリスク管理委員会を改組し、サステナビリティ推進委員会を設置しました。

私はサステナビリティ経営とはより広範な意味合いを持っているものと捉えており、すでに存在する事業が目の前で直面する課題を解決することとは別の視座で、常にこれからの社会がどのように変化していくのかを捉える大局観を持ち続けることが重要であると考えています。そのためには、企業として意識的に様々なところにアンテナを張り巡らせなければなりません。また、目的を達するためには、多様な考え方や価値観を上手く自社内に取り込むことも必要です。このようにして張り巡らせたアンテナから世界全体の大きな流れを経営に生かしていくことが私の考えるサステナビリティ経営のあり方です。よって、私たちが実際にすでに取り組んでいるスポーツ事業や起業家の育成・支援といった、一見するとメディアドゥの本業から離れていることに取り組むこともサステナビリティ経営の重要な側面だと捉えているのです。

加えて、持続可能な企業になるためには、逆風が吹いたときに私たちを応援、サポートしてもらえる仕組みや評価をつくっていくことも重要です。例えば当社が設立した一般社団法人徳島イノベーションベース(TIB)のような起業家支援活動はすでに全国17県に広がっていますが、今後は30県に広がる見通しで、数多くの経営者の皆様に参画・賛同していただいています。もちろんこれは、地方創生という社会的課題の解決に向けて、当社単体だけでなく地域とともに取り組む形となるようデザインした施策ですが、こうした社会との繫がりを意識した活動が当社の信頼度や存在価値を高め、ひいては、知名度やプレゼンスが向上し、「メディアドゥ」というブランドが確立され、人材採用といった経営基盤強化に繋がる。つまり、これだけの規模の社会関係資本を当社は築き上げることができるということをお示ししているのです。長期的に企業経営を行ううえでは、必ず逆風に晒される局面が訪れます。そうした局面を乗り切るために、社会全体の動向を常に大局観を持って見定めておくこと、そして、逆風が訪れた場面でも当社の味方となっていただけるような存在をつくり上げていくこと、それを追求していくのがメディアドゥの経営陣におけるサステナビリティではないかと思っています。

05. 最後に強い覚悟のもとで、必ず成し遂げる。


代表取締役社長 CEO 藤田恭嗣

冒頭で申し上げた通り、今回の中期経営計画期間は、メディアドゥがもう一段階次のステージへと上がっていくための重要な分水嶺であると捉えています。経営面においては、電子書籍流通に続く新たな収益の柱をきちんと打ち立てること、事業領域においては、「電子書籍流通事業のメディアドゥ」から「コンテンツ業界に貢献するメディアドゥ」への進化を成し遂げること、とりわけ、デジタルコンテンツのアセット化については何としても実現したいテーマなので、必ずや機会をたぐり寄せて事業の方向性を見出したいと考えています。株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆様におかれましては、私たちが展開する戦略、サービスの可能性に、ぜひご期待ください。

2022年8月
株式会社メディアドゥ
代表取締役社長 CEO
藤田 恭嗣

RECOMMEND
株式会社メディアドゥ統合報告書 2022

- 報告対象期間:2022年2月期(2021年3月1日 - 2022年2月28日)
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