To shareholders

株主・投資家の皆様へ

代表取締役社長 CEO 藤田恭嗣

電子書籍市場は勢いを増してさらに拡大

株主の皆様には、平素より格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。第21期となる2020年2月期は、当社グループの主力事業である電子書籍取次事業を担う2つの事業子会社、株式会社メディアドゥと株式会社出版デジタル機構が合併し、新たな体制でのスタートとなりました。

私どもは2017年3月の出版デジタル機構子会社化以降、両社の各制度を根本から見直すとともに、2つの組織を1つに統合するだけでなく、より効率的な組織運営ができるような体制を検討しておりましたが、この合併をきっかけに両社の統合は第2フェーズへと進み、来期からはシステム統合によるコスト削減が実現する見込みです。さらに、2020年6月からは、統合の総仕上げとして、当社(株式会社メディアドゥホールディングス)とメディアドゥを合併※1 し、経営判断の迅速化を促進していく所存です。


メディアドゥの高い技術力を活かし、電子書籍市場の拡大を自ら推進

組織体制の統合は、2018年7月に発表した中期経営計画で掲げた“Publishing Platformer”、すなわち電子書籍流通全体を支える存在への転換の実現に向けた戦略方針の一環です。当社はこの実現のために、当社が担うべき役割を、「①LEGACYを作る」と、「②LEGACYを創りに行く」の2つに分けました。

まず、「①LEGACYを作る」においては、電子書籍市場の拡大を支えるべく、出版社や電子書店と連携したプロモーションの実施や、効率的な運用体制によって流通カロリーの削減を行うことを目指しています。2019年3月に完成した新システムは米Amazon社が提供するクラウドサーバー「AWS」上で稼働するため、拡張性や冗長性に優れているほか、従来の3倍のパフォーマンスを発揮でき、電子書籍市場のさらなる拡大や5G時代の到来にも対応できる性能を有しています。新システムへの移管は順調に進んでおり、来期からは旧システムにかかる運営費用の一部が削減できることから、利益率が改善する見込みです。今後はオペレーショナル・エクセレンスの確立に向けて、一層の体制強化と効率化を図ってまいります。

もう一つの「②LEGACYを創りに行く」においては、ブロックチェーンを活用した新たなプラットフォームを開発しています。電子書籍にはいつでもどこでも読める、場所を取らない、などの利点がありますが、紙の本と違って所有権がないため、電子書店がなくなると読めなくなってしまいますし、売ったり貸したりすることもできません。こういったユーザーはキャズム理論※2 において「レイトマジョリティ」と呼ばれ、電子書籍のような新しいサービスの利用には慎重です。MMD研究所の「2018年8月 電子書籍の利用に関する調査」によると、「電子書籍を一度も利用したことはない」人は全体の55.3%を占めており、こうしたユーザーが「不安・不便」を感じたままでは電子書籍市場はいつか頭打ちになってしまいます。私どもは、電子と紙の本それぞれの利点を生かした「安心・便利」を感じられる仕組みを提供することで、電子書籍市場のさらなる拡大を促し、さらには出版市場全体の活性化に貢献したいと考えています。


将来の収益貢献に向けた「種まき」として、テレビCMや新規事業スタート

第21期は電子書籍流通事業以外の事業においても積極的に投資を行っています。ビジネス書の要約配信サービス「フライヤー」は、2019年5月にグループ初となるテレビCMを実施いたしました。テレビ東京系列のビジネス系番組において、まずは実験的な規模からの展開となりましたが、結果は非常に好調で個人法人ともにユーザー数は大きく増加しました。2019年9月からは全国のTSUTAYA書店400店以上でフェアを展開するなど、多くのユーザーに信頼度の高いビジネス系メディアとして認知されるようになっているほか、出版社からも「フライヤーで紹介されると売上が伸びる」という高い信頼を獲得しています。

また、当社グループは新たに「インプリント事業」という出版事業を開始いたしました。ここ数年で電子書籍の拡大によって、大手出版社は軒並み収益を改善させていますが、その恩恵を中小出版社はまだ十分には享受できていません。その背景として、デジタルシフトに向けたノウハウやリソースが不足していることなどが挙げられます。私どもはこうした中小出版社、ひいては業界が抱える課題を解決するべく、自ら出版事業を手掛けることを決断いたしました。

新規事業においては「インプリント」という運営形態を取り入れます。インプリントとは、欧米の出版社にみられる出版レーベルやブランド名のことで、彼らは複数のインプリントを保有し、管理組織やノウハウ、在庫管理や生産管理のシステムなどを共有することで効率的な出版プロセスを構築すると同時に、独立した編集機能を有するインプリント毎に特色ある出版物のラインナップを実現しています。

インプリント事業を開始するにあたって、当社は株式会社ポプラ社の子会社であるジャイブ株式会社を子会社化することで管理機能を有するとともに、インプリントレーベルの第一弾として、株式会社宙出版より少女コミックレーベルを刊行するネクストFレーベル編集部を譲受いたしました。インプリントレーベルについては今後も拡充し、デジタル中心の効率的な出版体制を構築することで中小出版社が持つIPの価値を最大化し、出版市場の活性化に貢献してまいります。


時価総額500億円突破。さらなる企業価値向上に向けた基盤構築

近年、企業の社会的責任(CSR)の視点から、サステナビリティへの取り組みに高い関心が集まっています。特に中長期的な成長を目指すためには、ESG、すなわち環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの視点が重要であるという考えが広まってきています。当社としてもこうした世の中の流れを汲み、永続的な価値を提供し続けるために、統合報告書の作成に着手することといたしました。社内外のステークホルダーに対し、当社の経営ビジョン、当社の強みである出版業界におけるポジションやテクノロジー、今後の事業展開についての情報提供を行い、理解を深めていただければと考えております。

当社は2019年7月に、上場して初めて時価総額500億円を超えました。これも株主の皆様のご支援の賜物と感謝しております。今後は中期経営計画に基づき、さらなる事業拡大と利益創出によって、企業価値を一層高めてまいりたいと考えていますので、株主の皆様には引き続きご支援賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


業績ハイライト

2019年度における電子書籍市場規模は、海賊版サイトの影響を受けた前年度からの市場の高い成長を踏まえ、506億円増加(18%増)の3,332億円と予想されております。また電子雑誌市場は290億円、電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場は3,622億円となる見込みです。また、このまま順調に推移すると、2023年度の電子出版市場は、4,610億円(電子書籍市場4,330億円、電子雑誌市場280億円)※3 にまで拡大するものと予想されております。

昨年、大手海賊版サイト「漫画村」が閉鎖し、今年7月に首謀者が逮捕されたように、業界を挙げた海賊版サイトの取り締まりが奏功しており、今後も電子マンガが順調に拡大すると見られていることや、小説やビジネス書など「文字もの」の書籍も徐々に電子書籍での売上が拡大していることが、市場拡大への期待につながっているものと考えられます。

日本では、マンガは電子書籍が紙の売上を逆転するなど電子化が進んでいますが、文字ものの本はまだ他国と比較しても電子書籍の比率が低く、潜在市場はまだまだ大きいと期待しています。このような市場背景の中、「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ」を当社グループのビジョンに掲げ、著作物の健全なる創造サイクルを実現するとともに、より豊かな社会づくりに貢献するための事業推進や業容の拡大に取り組んでまいりました。

第21期となる2020年2月期上期においては、海賊版サイトの影響を受けた前年度から回復し、市場成長が想定を上回ったことで、売上高31,881百万円(前年同期比37.3%増)、経常利益851百万円(前年同期比59.5%増)となりました。期初に発表した今期業績予想に対して、売上高は53.1%、経常利益は56.7%の達成率となり、当社の売上高は市場成長に伴い期末にかけて増加する傾向にあることから、中間時点で50%以上の達成となっていることは事業が順調に進捗しているということの証左であると考えております。

なお、今期は前述した新システムへの移管にともない、サーバー費用や業務委託などの費用が前期よりも増加しておりますが、来期からは旧システムにかかる運営費用の一部が削減できることから、利益率の改善を予定しております。また今期は、子会社である株式会社フライヤーの広告宣伝や、2019年3月に買収したMyAnimeList, LLCの体制整備に伴う人件費の増加といった先行投資を行っております。これらの効果が発現することで、来期は収益構造が改善し、利益成長を実現できるものと見込んでおります。

2018年7月に発表した中期経営計画では、数値目標として2021年2月期に売上高630億円、EBITDA35億円、2023年2月期に売上高800億円、EBITDA60億円を掲げておりました。しかしながら、2019年2月期の業績が大きく上振れたことや、その後も順調に事業が拡大していることから、これらの数値目標については2020年2月期第3四半期決算発表時(2020年1月を予定)に見直しを行いたいと考えております。

今後はこの目標の実現に向けた戦略的な取り組みを実施してまいりますので、ぜひご期待ください。

(第21期中間株主通信より)

株式会社メディアドゥホールディングス
代表取締役社長 CEO
代表取締役社長 CEO 藤田恭嗣


  • ※1:本合併は2020年5月下旬に開催予定の第21回定時株主総会のご承認を経て実施する予定です。また、本合併の後に当社社名を株式会社メディアドゥホールディングスから株式会社メディアドゥに変更予定です。
  • ※2:1991年、ジェフリー・ムーアが著書「キャズム」(翔泳社、原題「Crossing the Chasm」)の中で提唱。
  • ※3:出所:インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2019」より