株主通信BUSINESS REPORT

株主通信では、経営戦略や事業並びに業績の進捗のご報告などを中心として、代表メッセージやトピックスなどを、株主の皆様に向けてご報告しております。これまでは、半期毎/年2回の発行でしたが、統合報告書の発行に伴い、2020年2月期(第21期)より中間/オンラインのみの発行となりました。

メディアドゥが目指す成長とコーポレート・ガバナンスのあり方

メディアドゥグループは2022年4月、5カ年の新中期経営計画(2023年−2027年2月期)を策定・公表しました。
前中期経営計画期間(2019年−2023年2月期)では電子書籍取次の国内最大手として、出版業界における“ポジション”という確固たる強みを確立したメディアドゥ。当期からは「Publishing Platformer」として出版業界からコンテンツ業界へ裾野を広げ、第二の事業の柱となる新規事業の創出に加え、それを実現するための経営基盤やコーポレート・ガバナンス体制の更なる強化が不可欠です。
取締役 CSO兼CFO 苅田 明史と社外取締役 金丸 絢子の2人に、新たな中期経営計画とガバナンスに対する評価や課題、今後の展望を聞きました。


“一本足”からの脱却、更なるガバナンスの実効性向上へ

金丸:新中期経営計画(以下、新中計)は、会社として転換期であることが色濃く出ています。今までの電子書籍流通事業という一本柱から、この5年間で新たな事業軸を戦略的に構築していくことを宣言する一方で、新規事業で結果を出していくことに対するメッセージも十分に感じています。

苅田:ご理解のとおり、「いかに一本足打法から脱却するか」がメインメッセージとなっています。電子書籍流通事業は、成長を続ける電子書籍市場に対応してインフラ整備やシステム開発に注力し、盤石な営業・運営体制を構築できたからこそ、大きく伸ばすことができました。同事業がメディアドゥにとって最も重要な事業であるということに変わりはなく、このような強固な事業基盤があるからこそ、新しい事業にチャレンジすることができます。一方で、戦略投資事業は市場を新たに作るところからのスタート。第二の収益の柱として、売上高の構成比を現在の8%から新中計最終年度の2027年2月期には25%へ引き上げることを目指す考えです。この新中計期間は、その実現に向けて組織の在り方を変えていくチャンスだとも考えています。

金丸:まさに経営や事業戦略の側面だけでなく、指名報酬諮問委員会やサステナビリティ推進委員会の設置、モニタリングボードへの移行を見据えたガバナンスの実効性向上についても新中計では検討・言及しています。2022年4月に東証プライム市場へ移行したこともあり、直近の一年間でもガバナンス向上に向けた取り組みは進んでいるというのを肌で感じています。理想とする枠組みを示すことはとても大事ですが、より肝要なのは毎年きちんと取り組み内容を評価・分析をしながらガバナンスの実効性を継続的に高めていくことです。


サステナビリティ向上の取り組み

苅田:ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の世界的な高まりとともに、社会の持続可能性を企業の成長機会として取り込むサステナビリティ経営の推進が求められています。当社でも環境問題や社会課題を、事業活動と企業価値創造に取り込んでいくべく、推進体制の構築・強化に取り組んでいます。具体的には、当社の持続可能性向上に資する機会と重要リスクの特定と見直しを図るため、2022年6月にリスク管理委員会を改組して「サステナビリティ推進委員会」を設置しました。昨年の取締役会では金丸取締役に「リスクは把握するだけでなく、その対策の進捗・改善状況をモニタリングすることが重要だ」と提言をいただきました。現在の取り組みや改善施策を見える形にして定期的にモニタリング・評価し、PDCAを回していくプロセスの強化が重要だと考えています。

金丸:リスク管理委員会を設置していても機能していない、リスクの把握の仕方が分からないなど、ガバナンス向上やサステナビリティ推進に向けた取り組みをスタートしてから悩まれる企業例を多く見かけます。「リスク」という言葉は曖昧で、見方によってはどれもリスクだと言えてしまうのです。現場が何をリスクだと認識し、経営層に報告すべきか。その判断は非常に難しいと思います。適切に報告できるツールや基準を示していくことが不可欠だと思います。


人材の流動性を高める

金丸:また、当社では事業拡大の戦略的手段の一つとして多くのM&Aに取り組んでいますが、その後のPMIやフォローアップに多少の人手不足が見受けられる点が課題として挙げられると考えます。より適材適所な人員配置といった適正な経営資源配分ができれば、より安定感が増すのではないでしょうか。

苅田:親会社として財務面のKPIのモニタリング・評価はできていますが、人事・法務・総務といったコーポレート機能については、ガバナンスを効かせながらシナジーを創出するための連携強化が一層必要だと感じています。また、エース級の若い人材を買収した子会社に投入するなど、事業側からもっと食い込んでいくための施策も必要だと思います。PMIの観点に加え、人材育成の観点でも、グループ全体での人材の流動性を高めることができれば、当社で仕事をしているだけでは経験できない業務や挑戦、ダイナミズムといった多くの学びが得られ、視座・視野を広げる機会になりますし、そうした経験や学びが経営人材の育成にも繋がるはずです。


女性管理職の比率向上を推進

苅田:人材活用という観点では、ダイバーシティの推進についても課題感を持っています。メディアドゥでは女性従業員が約55%を占めていますが、女性管理職比率は2割程度で、まずは3割を目標に引き上げていきたい考えです。人材プールの状況を見ると、管理職においても活躍が期待される女性候補者は多くいます。より一層、性別や年齢にとらわれず活躍できる場の整備や管理職登用に向けた施策検討を含め、人的資本戦略の確立と実行に注力していきたいと考えています。

金丸:過半数が女性従業員ということは、女性も入社しやすく働きやすい「環境」はあるわけですから、管理職登用が十分にできない要因を分析して紐解くことは必要ですね。女性管理職を増やすには、ライフステージやスタイルといった様々な志向の働き方を実現しているロールモデルが多くいることが理想的だと考えています。画一的な働き方でなく、それぞれの能力を発揮でき、成果に繋げられる環境作りが大切です。無意識に存在するジェンダー・バイアス等にとらわれることなく、人材や働き方の多様性を広げることがダイバーシティの本質ではないでしょうか。

苅田:おっしゃるとおり、多様な働き方を支援するだけでなく、外国籍人材や障害者の雇用、LGBTQへの配慮といったこともダイバーシティの重要な観点です。国際事業の拡大に伴い、外国籍人材が活躍できる余地は増えていますし、障害者雇用者数も直近では増加させています。しかし、多様性を企業価値創造のドライバーのひとつにしていくには絶対数をより増やすと同時に、その価値観を認め、取り込んでいく(インクルージョン)していく必要があると考えています。LGBTQに関しては、他社では社内外の理解促進を図る「レインボープロジェクト」など様々な取り組みを実施しています。当社でも無意識の思い込みや偏見をなくし、「ダイバーシティ」の本質理解を進めていきたいと思います。

金丸:例えば、法律婚以外の婚姻形態にも対応した社内規程を置く企業も増えていて、導入のハードルは高くないと思います。そうした制度を検討していく過程で無意識の思い込みに対する気づきもあると思うので、まずはそこから取り組んでみてもいいのではないでしょうか。日本はダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みが諸外国に比べると遅れていますが、業界にもよりますが、将来的には企業の取り組みや方針が取引時のチェック項目となってもおかしくないと感じています。


経営陣の職責と報酬をより透明性のあるものに

金丸:私が委員長を務める指名報酬諮問委員会では、主に取締役や執行役員の指名や報酬に係る方針の妥当性や手続き等について検討・審議しています。委員の過半数は独立社外取締役で構成されています。指名・報酬の決定プロセスに独立社外取締役が関わり、少数株主を含む株主の皆様の共同の利益を代弁する立場の視点を入れることで、更なる経営の透明性や公正性、客観性の向上を図り、長期的かつ持続的に会社を成長させる仕組みとして機能させていきたいと考えています。

苅田:当社グループのコーポレート・ガバナンス基本方針では、社外取締役の任期は4年と定めており、2〜4年後には今の取締役会メンバーが大きく変わっていてもおかしくありません。「指名」の機能はとても重要で、次世代経営層をどう確保・育成していくのか、執行役員のプールを拡充するのか、あるいは外部から登用してくるのかなどを検討する必要があります。監督と執行をどう定義づけ、どういったプロセスで評価・指名し、いかに持続可能な組織体にしていくのかという、前提となるストーリーから考えなければならない、まさに経営の在り方を問う活動だと感じます。

金丸:そうですね。そういった意味では、執行役員が取締役会に出席・陪席して、発言や説明をする機会をより一層増やしていくことも必要だと思います。こうしたことが次世代経営層の確保や育成といった、持続可能なボード・ガバナンスにもつながると考えます。


取締役会は「モニタリングボード」を志向

苅田:先ほど金丸取締役からもありましたが、新中計でも示している通り、取締役会は業務執行の意思決定に関与する「マネジメントボード」から、業務執行の監督に専念する「モニタリングボード」への移行を目指しています。

金丸:メディアドゥは取り扱う事業の特性や成長ステージに鑑みると、より素早い意思決定の仕組みをつくる必要があると認識しています。執行役員や現場の権限を更に広げて迅速な判断を可能とし、事業成長のスピード感を加速させ、取締役会で業務執行体制を厳しく監督する「モニタリングボード」として機能させる方が、当社にはフィットしてくるように思います。それを実現するには、後からでも業務執行を評価できる体制や制度を整備していくことも重要だと感じます。

苅田:モニタリングボードへ移行するための施策のひとつとして、段階的に社外取締役比率の引き上げも検討しています。これにより、客観性と独立性を一層担保し、取締役会の監督機能の向上が見込めると考えています。また、事業ごと・タイミングごと等、柔軟に規程や運営方法などを見直す必要もあります。永遠の課題かもしれませんが、スピード感とガバナンスの適切なバランスを追求していきたいと思います。株主の皆様をはじめとしたステークホルダーに対して説明責任を果たすことが最も重要であるため、当社の各機関および全役職員一人ひとりが経営の健全性や透明性の向上を目指して、コーポレート・ガバナンス体制の強化を図りたいと思います。