株主通信BUSINESS REPORT

株主通信では、経営戦略や事業並びに業績の進捗のご報告などを中心として、代表メッセージやトピックスなどを、株主の皆様に向けてご報告しております。これまでは、半期毎/年2回の発行でしたが、統合報告書の発行に伴い、2020年2月期(第21期)より中間/オンラインのみの発行となりました。

「テクノロジーによって広がる可能性をコンテンツ業界が十分に享受できるよう、当社がイニシアティブを取って取り組みます。」


株主の皆様には、平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

第24期となる2023年2月期上期は、5カ年の新たな中期経営計画を発表しました。当期より事業セグメントを従来の「電子書籍流通事業」及び「その他事業」の2つのセグメントから、「電子書籍流通事業」及び「戦略投資事業」へと変更し、一層の事業成長に向けた選択と集中を図っています。
電子書籍流通事業で培ってきた強みである2,200以上の出版社、150以上の電子書店との取引基盤を有する業界ポジション、そして技術力を生かして新規事業へ投資し、新たな収益の柱の構築を目指すとともに、コンテンツの新たなあり方を提言し、「コンテンツ業界に貢献するメディアドゥ」を実現してまいります。
全国の紙の出版物の販売金額は1996年をピークに四半世紀でおよそ半分となり、書店の数も半分以下の約1万店舗にまで減少しています。こうした中、当社は資本業務提携を締結した出版取次大手の株式会社トーハンと連携し、NFT(非代替性トークン)を活用した本を全国の書店に流通させることで、本の価格向上と売り伸ばしの可能性を探るなど、業界の活性化・進化にむけた挑戦に昨年10月から取り組んでいます。一つ一つの結果を踏まえて工夫を重ね、およそ1年でその可能性を証明する実績と手応えが得られています。
書店は地域の文化を支える必要不可欠な拠点であり、当社はその存在意義を強く信じています。コンテンツを扱う書店などのリアルな空間が、テクノロジーやインターネットを活用して発展する。そうしたサービスを生み出し、提供し続けることが、コンテンツ業界に貢献する当社の使命だと考えています。

代表取締役社長 CEO 藤田恭嗣

上期業績と事業進捗

前期上期累計 当期上期累計 前年同期比
売上高 実績値:552億円※1
実力値:492億円
542億円 実績値:-1.8%(-10億円)
実力値:+10.1%(+50億円)
営業利益 16.8億円 13.3億円 -20.9%(-3.5億円)
EBITDA 22.2億円 20.8億円 -6.3%(-1.4億円)
当期純利益 8.3億円 6.2億円 -24.8%(-2.1億円)

※1:前年実施の一部書店の大型キャンペーンによる一過性の影響(売上影響額約60億円)

メディアドゥグループの2023年2月期上期における売上高は54,226百万円(前年同期比-1.8%)、営業利益は1,335百万円(同-20.9%)、経常利益は1,287百万円(同-23.5%)、親会社株主に帰属する当期純利益は628百万円(同-24.8%)と減収減益となりました。これは、前期の同期間中に一部書店による大規模キャンペーンの実施(約60億円の売上高)や、株式会社日本文芸社の連結子会社化による5カ月分の計上分といった一過性の要因があったため反動減によるものです。この一過性要因を除くと、第2四半期における連結売上高は過去最高を更新しています。
また、電子書籍流通事業に関しては、主要取引先であるLINE Digital Frontier株式会社(LINEマンガ)に対するバックエンド業務が株式会社イーブックイニシアティブジャパンへ移管されることを見込み、今期業績に織り込んでいますが、移管スケジュールに一部遅延が発生したことで上期に関しては業績の上振れ要因となりました。ただし、今期中の移管完了予定に変更はなく、おおむね期初の計画通りの着地を見込んでいます。
株主還元につきましては、目標としていた総還元性向20%以上を、30%以上に引き上げることにしました。当期の業績は上場後としては初の減収減益を予想していますが、株主・投資家の皆様への還元も重要な経営課題との認識に加えて、株価水準等を総合的に勘案した結果、2022年4月14日に約10億円の自己株式取得を決議しました。その結果、今期の総還元性向は約117%となる見込みです。なお、自己株式は取得後、5月末をもって消却を完了しています。

また一方、当社グループは大きな時代の転換点にあると感じています。テクノロジーの発達によって世の中はこれまで以上に便利になり、余暇の時間も増え、コンテンツも従来以上に次々と生まれてくる世界がすでに現実として存在します。
いまや人々の生活の一部となっているこの小さなデバイス(スマートフォン)を通して、いかにコンテンツIPホルダーに収益機会、ユーザーに優れた顧客体験を提供できるかが問われています。同時に、優れた改ざん耐性を有するブロックチェーン技術の発展は、「消費」しかされてこなかったデジタルコンテンツのプレゼンスを飛躍的に向上させる可能性を秘めています。
こうしたことを踏まえて当社は、デジタルコンテンツに“個数”の概念を持たせ、資産として価値を担保し、流通させることができる、DCA®(デジタルコンテンツアセット)を発明したのです。これは、様々なデジタルコンテンツの価値をさらに高めるビジネスモデルの提案を通じて、作品を作り出すクリエイターに対する新たな選択肢、そして新たなユーザー体験を提供するというまさに「著作物(コンテンツ)の健全なる創造サイクルの実現」というミッションそのものの体現であり、当社グループのありたい姿に向けた挑戦です。こうしたことを踏まえて、当社は2022年4月に新たな中期経営計画を策定・公表しました。


「信頼」を土台に、新たな収益の柱の構築を完遂する(新中期経営計画概略)

連結売上高(単位:億円)

連結EBITDA(単位:億円)

当社グループは、2017年3月に実施した出版デジタル機構の買収と統合を経て、国内電子書籍流通として、最大の強みである圧倒的No.1のポジションを確固たるものとしました。業界における明確なポジションを得られたことによって、今後の様々な可能性に挑戦できるという見えざる資産を構築できたと言えます。
新中期経営計画では、「これまで培ってきたメディアドゥの『信頼』を土台に、新たな収益の柱の構築を完遂する」ことをキーワードとして掲げました。事業領域の進化という観点では、DCA®の実現に向けて「コンテンツ業界に貢献するメディアドゥ」へと進化を果たし、安定的な収益成長という観点では、電子書籍流通事業以外の収益の柱の構築を目指します。
具体的には、電子書籍流通事業に関しては引き続き当社の主力事業と位置付けつつ、当社がこれまでに培ってきた「Position」と「Technology」という強みを発揮できる注力領域として、新規事業を「インプリント事業」「出版ソリューション事業」「国際事業」「FanTop事業」という4つのセグメントに整理し、「戦略投資事業」としました。電子書籍流通事業から得られる安定的な収益をもとに、これまで以上に戦略投資事業へ経営資源を振り向けることで、中期経営計画最終年度となる2027年2月期には戦略投資事業から得られる売上高の構成比を現在の8%から25%へ引き上げ、また連結EBITDAにおいても50%の構成となるよう、成長を加速させていく考えです。
電子書籍流通事業においては、引き続き業務効率化による流通カロリーの抑制と、流通スピードの向上、例えば入稿から販売までの期間短縮といった業務の強化・高度化に努め、電子書籍流通事業をさらに強固な事業へと深化させていきます。
他方、戦略投資事業の中で大きな期待を寄せているのが、事業成長と出版業界の発展の双方に貢献が可能と考えている、出版取次大手である株式会社トーハンとの連携で実現した「NFTデジタル特典付き出版物」です。トーハンと当社は資本業務提携を行ってからわずか半年の間に、新たな出版のあり方を提案し、ユーザーの楽しみ方の選択肢を増やすと同時に、出版社や書店に対して収益機会や読者との接点創出といった新たな価値を提案する、まさに出版構造のDXを図ってきました。その結果、足もとでは通常の紙書籍と比べてデジタル特典付き出版物の販売単価が平均約34%、実売率は平均約44%上昇※2するといった、これまでの枠組みでは難しかった大幅な値上げという実績を実現するなど、取り巻く様々なプレイヤーが利益を享受できる好循環を創出しています。
ブロックチェーンやNFTといった新しい技術はフィジカルを補完することができる、いわば「フィジカルと共創するテクノロジー」だと考えています。「NFTデジタル特典付き出版物」は、短期間での実績ではありますが一つの突破口として社会実装し、その効果を証明できたことは重要な革新であったと評価しています。
あらゆる出版社や取次、書店といった業界プレイヤーを巻き込み、点から線へ、そして線を繋いで面として業界全体へと広げていくことが、共通課題への打開策でもあり、共通価値の創出なのだと確信しています。それがひいては「FanTop」というプラットフォームの価値向上に繋がり、結果として会員数の増加や売上といった財務的価値や企業価値の向上へと繋がっていくのだと考えています。

※2:2022年1月から現在までに実施したデジタル特典付き出版物での平均、初版発売日より30日間の計算期間(重版含まず)

2022年2月期
(前期)
2023年2月期
(今期)
2025年2月期
(中計3年目)
2022年2月期
(中計5年目)
売上高 1,047億円 1,000億円 1,200億円 1,500億円
営業利益 28.1億円 20.0億円 40億円 85億円
EBITDA 39.2億円 35.9億円 55億円 100億円
当期純利益 15.7億円 8.5億円 28億円 60億円
ROE 10.9% 5.2% 15.0% 23.0%

強い覚悟のもとで、必ず成し遂げる

今回の中期経営計画期間は、メディアドゥがもう一段階次のステージへと上がっていくための重要な転換点であると捉えています。経営面においては、電子書籍流通に続く新たな収益の柱をきちんと打ち立てること、事業領域においては、「電子書籍流通事業のメディアドゥ」から「コンテンツ業界に貢献するメディアドゥ」への進化を成し遂げることです。株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆様におかれましては、私たちが展開する戦略、サービスの可能性に、ぜひご期待ください。

株式会社メディアドゥ
代表取締役社長 CEO